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初仕入れ物件

先日、懐かしい場所を訪れた。

埼玉県三郷市、武蔵野線 三郷駅から
徒歩6分のマンション。

この物件は私が社会人一年目に
初めて土地の仕入れを担当した物件。

忘れもしない、17年前の2/26
JRの操車場跡地を売却するための
独立行政法人が実施した入札。

三郷駅はまだ当時開発が進まず
今のようにIKEAやららぽーとが
建ち並ぶなんてとても考えられない
街でした。

ファミリー向けのマンション
200戸超えの規模が建つ大きな敷地。
当然、入札には競合多数だと思い
日々上司と協力して色々な調査をして
無事役員会での承認を得て、いざ入札へ。

当日、会場に入ると…

あれ?なんか閑散としてる。。。

入札時間の直前、自分達以外誰も
来ない。そこで上司が私に衝撃の一言。

『この物件、マンション建つんだろうな?』

社会人一年目の私は呆然。

とにかく社長に連絡せねばと、電話
で『私たちしかいません』と報告をすると

『今から行く』と。

会社が近かったのですぐに現れた社長。

さすがにマンション建たないとは言わず。
会社背負って検討してるんだから
今更そんな無責任なことは言わないのです。

入札が始まるところで今度は社長から
衝撃の一言。

『最低落札価格より安く入れよう』

?!

それ、入札不調になりますけど。。。
それも俺たちしかいないんだから
最低落札価格で買えるのに…。

そう、最低落札価格は公表されていて
もちろんその価格を割っての入札は
認められていません。

それなのに……戸惑う私に

『さ、早く書け』

と、入札額を指示する社長。

入札書に記載し準備万端。
担当官が厳かに入札の手続きを
進めていきます。

ただ、私たちしかいないので
この後のドキドキワクワクは
少ないと安心した表情の担当官。

入札用の箱を開け、私の入れた封筒を
手に取りハサミで開封。
入札書を見た担当官…二度見してから
横にいる責任者に耳打ち。
全員に書類を回して、コソコソ話。
なんとなく煙に巻かれたような表情で
担当官が言いました。

『え〜…本件入札は不調となりました』

そりゃそうだ〜!!と、心の中で
突っ込んでいたところ…

『ちょっと待った!』

え?社長!?

『決裁権者の私が来ているのでもう一度!』

担当官の皆さん、顔を見合わせて
再度コソコソ話。

『それでは再入札を致します』

そして私は最低落札価格を書いて
封筒に入れ、箱に入れます。
『今度は頼みますよ』と担当官に
言われたようなかすかな記憶。

無事、開札して落札決定。

ホッとしたみんな。社長は如才なく
担当官に名刺を渡して挨拶し

『じゃ、あとよろしくな。おめでとう名取❗️』

と、去っていきました。
社長ってのは既成概念にとらわれず
誰もが想定しない事をして結果を出す
ものなんだなぁ。と。

肝心のマンションは、当時物凄く安く
販売出来ました。
多分今売ってもほぼ同じ価格か、それ以上
でも売れるんじゃないか?!

ま、最低落札価格で仕入れたんだから
販売も安くなりますよね。

購入頂いたお客様が、今でも幸せに
お暮らしであることを願っています。

長くなりました。

今日もサンキュー。